不動産は一般に高額で極めて重要な財産であるにもかかわらず、取引の際に、不動産売買契約書を公正証書で締結することはあまり行われていません。これはなぜでしょうか。
そもそも公正証書を作るメリットについては次のとおりまとめることができます。
①法律の専門家である公証人が関与すること
②当事者の本人確認・意思確認がしっかり行われること
③法律的に正しい契約内容で契約できること
④約束が守られないときは強制執行ができること(執行認諾文言付の金銭請求に限る)
⑤公証役場に原本が保存され謄本の発行を受けられること
では、不動産売買契約(不動産売買契約書の作成)を行うに際し、それらのメリットを求める必要があるでしょうか。上記の番号と対照して考えてみます。
①宅建士・宅建業者(以下「不動産業者といいます。)、司法書士といった法律の専門家が関与します。
②不動産業者や司法書士が、法律や司法書士会会則にもとづいて厳格な本人確認・意思確認を行います。
③不動産業者は、通常、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全日本不動産協会(全日)・不動産流通経営協会(FRK)などの標準売買契約書をベースに特約条項を書き込んだ売買契約書を使用することが多いので、法律的にそれほどおかしな契約内容になることはありません。また司法書士も所有権移転にかかわる部分を中心として契約内容をチェックしています。
④買主が、公正証書で不動産の引き渡しの強制執行を行うことはできません。売主は、代金を支払ってもらうまで物件の引渡しをしないので(引渡しと代金支払いの同時決済)、代金の支払いについて公正証書で強制執行をすることはありません。
⑤不動産登記制度により法務局で登記簿謄本が取得できます。また取引関係書類については不動産業者と司法書士に法律上の保存義務が課されています。
以上のとおり、不動産売買契約書を公正証書にするメリットは乏しい(公正証書の利点が他の方法により代替されている。)ので、公正証書が作られるケースは極めて稀です。
ところで、不動産を隣人・友人知人・親族に譲渡するケースにおいて、不動産業者の仲介手数料を節約するために、個人間売買(個人売買)が行われることがあります。しかし、金銭的に許すのであれば可能な限り不動産仲介業者を入れて売買契約を締結されることをおすすめします。不動産取引の安全は、前記のとおりの仕組みによって担保されているからです。不動産の権利関係や法令は一般に考えられているより難しいものです。
どうしても個人売買をするなら、少なくとも司法書士に売買契約書の作成と登記立会いを依頼してください。奈良県北葛城郡王寺町の明徳司法書士事務所では、不動産の個人間売買を安全に完結するサポートを行っています。